レノボが販売するノートパソコン、ThinkPad P14sをお借りしました。
14型の薄型ボディにNVIDIA Quadro P520を搭載したモバイルワークステーション。
LTEモデルも選択可能で、移動中や外出先でも仕事ができます。
性能や使い勝手を詳しく検証しました。
目次リンク
ThinkPad P14sの概要や特徴

ThinkPad P14sがどういったパソコンなのか、特徴を整理すると以下の通り。
ThinkPadらしいデザインと使い勝手
毎日持ち歩ける薄型コンパクトなボディ
LTE搭載モデルならどこでも仕事が可能
sRGBカバー率が約100%の広い色域
価格に見合ったパフォーマンスが出ない
基本的なスペックから順にご紹介します。
スペック
CPUやストレージ容量など、お借りしたパソコンの基本スペックは以下の通り。
OS | Windows 10 Pro 64ビット |
---|---|
CPU | Core i7-10610U |
GPU | NVIDIA Quadro P520 |
メモリ | 16GB |
ストレージ | 512GB SSD |
販売価格 | 265,793円 |
CPUとGPUの詳しいスペックを知りたい方は、こちらをご覧ください。


Windows 10 ProやQuadro P520が搭載されていることもあり、14型のノートPCとして考えると価格はかなり高め。
事務仕事のためのノートPCというより、CADや金融トレーディングなどの業務用途で使われることを想定しているモデルです。
価格とラインナップ

ThinkPad P14sはCore i5やRyzen 7 PRO搭載モデルも展開。
主なスペックと価格をまとめると以下の通り。
CPU | メモリ | ストレージ | GPU | 価格(税別) |
---|---|---|---|---|
Ryzen 7 PRO 4750U | 8GB | 256GB SSD | Radeon Graphics | 105,908円 |
Core i5-10210U | 8GB | 256GB SSD | Quadro P520 | 127,677円 |
Core i7-10510U | 168GB | 256GB SSD | Quadro P520 | 166,221円 |
Ryzen搭載モデルにはQuadro P520が搭載されていません。
用途に合ったものを選びましょう。
外観・大きさ

ここからはThinkPad P14sの外観を見ていきます。
レノボユーザーにはおなじみのデザインです。


仕様上の寸法は329×227mmと、14型のノートPCとしては標準的。

分厚さも18.9mmとスリムで、一般的なビジネスバッグに問題なく収納できるサイズです。

パソコン単体の重量は実測で約1.5kgでした。
飛びぬけて軽くはないものの、毎日持ち歩いても苦になるほどではありません。
ACアダプター

ACアダプターは65Wのコンパクトなものが付属。

重量はケーブル込みで約300gでした。
バッテリーの駆動時間も最大15.1時間とたっぷり。
パソコンの使い方次第ではありますが、負荷の小さい作業がメインならバッテリーだけで丸1日まかなえるでしょう。
インターフェイス
ここからはインターフェイスを見ていきます。

- USB3.1 Type-C Gen 1(電源と共用)
- USB3.1 Type-C Gen 2(Thunderbolt 3対応)
- ドッキングコネクタ
- USB3.1 Gen 1
- HDMI
- マイクロホン/ヘッドホン・コンボ・ジャック
- microSDメディアカードリーダー

- スマートカードリーダー(カスタマイズによる選択)
- USB3.1 Gen 1(Powered USB)
- イーサネット・コネクター
- セキュリティー・キーホール
有線LANも接続できますが、次世代通信規格のWi-Fi 6に対応。
Bluetooth v5.0にも対応しているので、マウスなどの周辺機器をワイヤレスで快適に動かせます。

背面に端子類は何もありません。
14型の薄型ノートPCとしてはインターフェイス類が充実しています。
キーボード

キーボードはテンキーレスの日本語配列。
ThinkPadに慣れている方にはおなじみの配列です。


ThinkPadの代名詞ともいえる赤ポチ(トラックポイント)も搭載。

筆者はマウス操作派ですが、トラックポイントに慣れてしまうと、もうほかのパソコンは使えなくなるとか。
今回お借りしたモデルは指紋認証のセンサーも搭載。
一部モデルは指紋認証に対応していないので、用途に合わせて最適な1台を選んでください。

単色のバックライトも搭載しています。
ディスプレイ

今回お借りしたモデルは、14型のUHD液晶(3,840×2,160)を搭載。
いわゆる4Kモニターです。
光沢のあるIPSパネルが使われていて鮮やかな映像を映し出せますが、映り込みが激しいのが気になるところ。

使用環境によっては室内灯などが映り込むため、画面が見えづらくなります。
Webカメラは物理的にシャットダウンが可能。


セキュリティ面が気になる方も安心です。

ディスプレイはほぼ180度開きます。
sRGBカバー率約100%

i1 Profilerでディスプレイの色域をチェックした結果は以下の通り。
- sRGBカバー率:99.9%
- AdobeRGBカバー率:87.6%
14型の薄型ノートPCとして考えると、なかなか驚異的な色域の広さです。
印刷を前提とした業務ではさすがにカラーマネジメントモニターが必要ですが、Webデザインや映像制作などの用途なら十分使えます。
ThinkPad P14sのベンチマーク結果

ここからはThinkPad P14sの性能を、各種ベンチマークソフトを使用して数値化していきます。
計測結果はいずれも当サイトで検証したものなので、あくまで参考程度にお考えください。
PCmark 10

パソコンの総合的な性能をチェックするベンチマークソフト、PCmark 10のスコアは1,974でした。
何度か試したものの、Digital Content Creationのスコアが異様に低く、価格の割にパフォーマンスが出ていない印象です。
CPU(CINEBENCH)

CPUの性能をCINEBENCH R20でチェックしました。
主なノートパソコン用CPUと比較した結果は以下の通り。
Core i7-10810U | |
---|---|
Core i7-1165G7 | |
Core i7-8565U | |
Core i7-10610U |
当サイトで計測してきたCore i7のスコアとしては、もっとも低いスコアが出てしまいました。
いろいろと原因を探ったものの、スコアは変わらず。
GPU(Fire Strike)

GPUの性能をFire Strikeでチェックしました。
GTX 1050 | |
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Radeon Vega 8 | |
Quadro P520 | |
Intel UHD Graphics |
CPU内蔵型(Intel UHD Graphics)よりはマシ、といったところでしょうか。
ストレージ(Crystal Disk Mark)

転送速度をCrystal Disk Markでチェックしたところ、読み込みで3,425MB/sという結果でした。
書き込みは若干速度が落ちるものの、実用上ストレスを感じることはほとんどないでしょう。
ストレージの種類による平均的な転送速度を比較すると、以下の通り。
NVMe M.2 SSD (Gen4) | |
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NVMe M.2 SSD | |
SSD(SATA) | |
HDD |
NVMe M.2 SSD(Gen4)は、今のところ限られた環境下でしか使えません。
クリエイティブ用途
動画編集と写真のRAW現像用途でどの程度のパフォーマンスを発揮できるかもチェックしました。
Lightroom
LightroomでRAWデータの書き出し速度をチェックしました。
使用したのは有効画素数3,635万のニコンD810で撮影したRAWデータ100枚で、書き出しにかかった時間は4分52秒。
主なノートパソコン用CPUとスコアを比較すると以下の通り。
Core i7-10510U | |
---|---|
Core i7-8550U | |
Core i7-10610U | |
Core i5-10210U |
Core i5には負けなかったものの、Core i7として考えると遅いです。
ディスプレイ自体は4K解像度で色域も広く写真編集に向いていますが、書き出し速度という点ではおすすめしづらい結果となりました。
Premiere pro
Premiere Proで4K動画の書き出しに、どれくらい時間がかかるか検証しました。
検証のために用意したのは、GoPro HERO7 Blackで撮影した4K 60fpsの動画データ。
H.264の「Youtube 1080p FHD」の設定で書き出そうとしたところ、10時間以上かかることが判明。

1時間ほどかかるケースは今まで何度もあったものの、さすがに10時間以上と表示されたのははじめてです。
パソコンゲーム
参考までにゲーム用のベンチマークソフトをフルHD解像度の設定で走らせたところ、FF14を動かすのは難しい模様。
ドラクエXのようなグラフィックがとても軽いゲームなら、ギリギリ動かせそうです。
ゲーム用途のパソコンではないので仕方ありません。

最高品質 | 942(動作困難) |
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高品質 | 1325(設定変更が必要) |
標準品質 | 1649(設定変更を推奨) |

最高品質 | 1702(重い) |
---|---|
標準品質 | 3268(普通) |
低品質 | 3950(普通) |
用途に合うスペックか慎重に判断を

最後にもう一度、レノボのThinkPad P14sの特徴をおさらいします。
ThinkPadらしいデザインと使い勝手
毎日持ち歩ける薄型コンパクトなボディ
LTE搭載モデルならどこでも仕事が可能
sRGBカバー率が約100%の広い色域
価格に見合ったパフォーマンスが出ない
正直に書いてしまうと、265,793円という高額な価格に見合った性能を発揮できていないと感じました。
いろいろと原因を探ってみましたが、結果は変わらず。
業務上でどうしてもQuadroが必要で、持ち歩けるコンパクトなノートPCを探している方は、候補に入れてみてはいかがでしょうか。