ヒューレットパッカード(以下HP)の2in1タイプのタブレットPC、HP Spectre x360をレビューする機会をいただきました。
13.3インチワイドの薄型ノートパソコンで、出張の多いビジネスマンやカフェで作業をすることの多い方にぴったりのモデル。
コンパクトなボディにどれだけのスペックを秘めているのか、詳しく検証してみました。
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HP Spectre x360の基本情報

今回使用しているのはHP Spectre x360 Convertible 13のプロフェッショナルモデル、カラーは高級感のあるアッシュブラックです。
どういったパソコンなのか、まずは基本的なスペックからご紹介します。
スペック
HP Spectre x360 Convertible 13(プロフェッショナルモデル)の基本スペックは以下の通り。
OS | Windows 10 Pro (64bit) |
---|---|
CPU | Core i7-8550U |
GPU | Intel UHD Graphics 620 |
メモリ | 16GB(2133MHz,LPDDR3 SDRAM) |
ストレージ | PCIe NVMe M.2 SSD 1TB |
第8世代のCPUを搭載していて、薄型ノートパソコンによく用いられる末尾に「U」のつく超低消費電力タイプ。

バッテリーの駆動時間や発熱の抑制を優先しているため、パフォーマンスは多少下がってしまうものの、一般的な事務作業やネットサーフィン程度なら十分すぎるほどの実力を持っています。
ストレージはSSDのみですが、ハードディスク(HDD)とは比べ物にならない転送速度を誇るPCIe NVMe M.2に対応したものを搭載。
OSにはWindows 10のProを積んでいるので、ストレージの暗号化機能も使用可能。
プロフェッショナルモデルの名に恥じない仕様といえるでしょう。
ラインナップ
HP Spectre x360のラインナップは大きく4つに分かれています。
モデル | OS | CPU | メモリ | 価格(税別) |
---|---|---|---|---|
ベーシックモデル | Windows 10 Home | Core i5-8250U | 8GB | 111,000円〜 |
スタンダードモデル | Windows 10 Home | Core i7-8550U | 16GB | 159,800円〜 |
プロフェッショナルモデル | Windows 10 Pro | Core i7-8550U | 16GB | 165,000円〜 |
パフォーマンスモデル | Windows 10 Home | Core i7-8550U | 16GB | 販売終了 |
エクセルやワード、メールの送受信などの事務用途がメインならベーシックモデルでも十分なスペックです。
パフォーマンスモデルはUHD(4K)ディスプレイを搭載していますが、すでに販売終了。
その他のモデルも在庫限りで販売を終了するかもしれないので、気になる方は早めのチェックをおすすめします。
また、CPUや外観がリニューアルされた最新モデルも販売中です。
モデル | OS | CPU | メモリ | 価格(税別) |
---|---|---|---|---|
ベーシックモデル | Windows 10 Home | Core i5-8265U | 8GB | 139,800円〜 |
スタンダードモデル | Windows 10 Home | Core i7-8565U | 16GB | 159,800円〜 |
プロフェッショナルモデル | Windows 10 Pro | Core i7-8565U | 16GB | 177,800円〜 |
パフォーマンスモデル | Windows 10 Pro | Core i7-8565U | 16GB | 189,800円〜 |
お得に購入したいなら今回レビューをしている旧モデル、少しでも性能の高いパソコンを買いたいなら最新モデルがおすすめです。
記載している仕様・価格は記事執筆時点のものなので、最新情報はその都度公式サイトにてご確認ください。
外観・サイズ
ここからは外観や大きさについて見ていきます。

高級感の感じられる落ち着いたデザインで、大人のためのパソコンといった雰囲気がありますね。
アルミの塊を削り出すCNC精密加工を採用していて、表面には梨地処理が施されていてサラサラとした品のある手触りです。

裏面はこのようにあっさりとしたデザインです。
仕様上のサイズは307×218mmとなっていて、A4のクリアファイルとほぼ同じ大きさ。
ビジネスバッグにも入れやすいサイズです。

13インチのMacbook Proと比べてみても、ほぼ同じサイズです。

分厚さは13.6~15.5mmとなっていて、非常にスリムです。

大きさ・分厚さともにMacbook Proとほぼ同じですね。

重量は1.29kgと、程よい重みを感じられます。
これくらいの重さなら、カバンに入れて毎日持ち歩いても苦になりません。
インターフェイス
ここからは主なインターフェイスについて見ていきます。
薄型ノートパソコンの宿命ですが、各ポートは少なめです。

右側にはThunderbolt3に対応したUSB Type-Cが2つと指紋認証リーダー。
左側にはUSB3.1に対応したポートが1つと、イヤホンジャックに電源ボタン、microSDカードを読み込めるリーダーが搭載されています。
背面にポート類は何もありませんが、うっすらとSPECTERと印字されています。

持っておきたいUSBハブ
外部ディスプレイやプロジェクターと接続するMini DisplayPortやHDMI、VGA端子などは一切ないため、変換アダプターをひとつ持っておくと安心です。

HP公式の拡張ドッグも販売されていますが、12,000円とかなり高額。
USB Type-Cに対応したUSBハブは2,000~3,000円で買えるので、ブランドにこだわらない方はAmazonなどを利用しましょう。
私はSDカードを読み込めて、HDMI出力もできるタイプを1つ持っています。
ACアダプターもコンパクト

ACアダプターはUSB Type-Cで接続する、65Wのコンパクトなタイプ。
30分で約50%充電可能なファストチャージ機能を搭載しています。

ACアダプターの大きさは実測で約7.5×7.5cmと、カバンに入れてもかさばらないサイズ。
バッテリー駆動時間は約16時間45分と、かなりの長持ち仕様なので、ちょっとした外出ならACアダプターを持ち歩く必要はなさそうです。
もちろんパソコンの使い方次第でバッテリーの減り方は変わるので、丸一日外出するようなときは念のためACアダプターを持参したほうがよいでしょう。
ディスプレイ

ディスプレイは13.3インチワイドのフルHD(1920×1080)に対応したもの。
非光沢(ノングレア)仕様ではないため、角度によっては蛍光灯などがガッツリ映り込みます。

好みが分かれるポイントではあるものの、ツヤツヤした画面のほうが写真などはキレイに表示できます。
ただ、長時間見ていると目が疲れるというデメリットも理解しておきましょう。
ノングレア仕様のディスプレイに変更はできないため、ツルツルの画面がどうしてもイヤな方は艶消しタイプの保護シートを張れば解決しますよ。
用途に合わせて使い分けられる
HP Spectre x360最大の魅力は、用途に合わせてパソコンの形状を変えられること。
ディスプレイを回転させれば、以下のように立てかけることもできます。

キッチンのカウンターなど、狭い場所にパソコンを置いて動画を見たいときなどに活躍してくれそうです。

設置場所に余裕があれば、このように置いたほうがパソコンの安定感はアップします。
ぐらついたり、パソコンの自重で傾いていくこともなく、しっかり固定されるのはすごいです。

完全にペタッと開くこともできますし、ディスプレイを完全に回転させるとタブレットモードで使用できます。

キーボードが裏側にくるため、iPadのように扱うには少々慣れが必要ですが、取引先との打ち合わせでパソコンの画面を見せたいときなどに活躍しそうです。
絵を描くのが好きな人は、タブレットモードでスケッチなどをすると楽しいかも。

もちろんタッチパネルにも対応しているので、タブレットモードでもさまざまな作業を進められます。
プライバシーモード
うれしい機能がもうひとつ。
視野角の広いディスプレイは便利ではあるものの、カフェや新幹線などで作業をしていると、隣に座っている人の視線が気になりますよね。
その点、HP Spectre x360には覗き見防止の機能が標準搭載されています。
ファンクションキーをポチっと押すだけで、視野角がぐっと狭まるので、人に見られたくない作業をしている方も安心です。
通常時のディスプレイ

プライバシーモードONの状態

キーボード
ここからはキーボードを見ていきます。

一般的なテンキーなしの日本語配列のキーボードですね。
仕様上のキーピッチは約18.7×18.7mm、キーストロークも約1.3mmと、標準的なキーボードといえます。

キーボードのバックライトもファンクションキーひとつでON、OFFを切り替えられるので便利です。
タッチパッドは広めに作られていますが、個体差もあるのか、あまりスムーズとは言えませんでした。

Macbook Proに慣れすぎているからかもしれませんが、思い通りに動いてくれないことが多々あり、少々使いづらく感じてしまいました。
マウスが欲しくなります。

スピーカーは可もなく不可もなく、ごく普通です。
薄型ノートパソコンはサイズの都合上、どうしてもスピーカーの性能は制限されるため、音にこだわるならヘッドフォンや外付けのスピーカーを使いましょう。
キータイプ音はカチャカチャ系
キータイプ音はポコポコとカチャカチャの間といったところでしょうか。
タイプ音は実際に聞いてみるのが一番わかりやすいので、20秒ほどの動画をご覧ください。
強くたたかない限りうるさい感じはしないので、会議中や静かなカフェでも使いやすそうです。
アクティブペン
オプションのアクティブペンも使ってみたのですが、なかなか使いやすくていい感じです。
1024段階の筆圧検知に対応しているので、簡単なお絵かきなら難なくこなしてくれます。

ただ、iPad ProとApple Pencilの組み合わせより素晴らしいかというと、若干差はあるように感じますね。
iPad Proは紙に直接描いているような感覚を味わえますが、こちらのアクティブペンはあくまでタブレットをペンで操作しているという感じです。
描いている様子を動画にしてみたので、こちらもご覧ください。
ほんのわずかではあるものの、ペンの動きと画面の動きに若干のタイムラグがあるように感じます。
ちょっとしたお絵かきやイラスト作成なら問題ありませんが、液タブ並みの性能を期待するのは止めておきましょう。
絵がへたくそという点は、目をつぶっておいてください。
スリーブケース
専用のスリーブケースも同梱されていて、これまたなかなか良い感じです。

当然ながらサイズもぴったり。
程よい分厚さとクッション性があって、パソコンを優しく守ってくれます。

ケースに入れた状態でも大きさはあまり変わらないので、そのままビジネスバッグなどに入れられます。

試しに普段使用しているビジネスリュックに入れてみましたが、すんなり入ってくれました。
カフェでの作業が映える
コンパクトかつおしゃれなHP Spectre x360は、カフェでの作業も快適です。

小さめの机にも置きやすいですし、何よりパソコンの外観がおしゃれなのでMacbookばかりの店内で目立ちます。笑

テントモードでコーヒーを飲みながら動画を楽しむなんてこともできますね。
覗き見防止の機能をONにしておけば、隣の人から見られる心配もありません。

1点注意したいのは、ツルツルのディスプレイは蛍光灯が映り込みやすいです。
座る場所やパソコンの角度によっては画面が見づらいので、うまく調整する必要があります。
各種ベンチマーク結果
ここからは各種ベンチマークソフトなどを使用して、HP Spectre x360の性能面を見ていきます。
まずはCPUから見ていきましょう。
CPU

CINEBENCH R15でCPUの基本性能をチェックしてみたところ、453cbという結果でした。
搭載されているCore i7-8550Uは、消費電力の低下を優先しているCPUなので妥当な数値といえるでしょう。
同じ第8世代のCore i7でも、ゲーミングノートなどに搭載されているCore i7-8750Hだと955cbという結果が出ています。

Core i7-5557Uは、少し前まで私がメインで使っていたMacBook Proに搭載されていたCPU。
世代がちがうとはいえ、3年前に約27万円で購入したパソコンより高性能なCPUということがわかります。
いずれの数値も当ブログで計測したものなので、参考程度にお考え下さい。
ストレージ
搭載されているSSDはPCIe NVMe M.2に対応したもので、CrystalDiskMarkでチェックしたところ期待通りの数値が出ました。

一般的なSSDと転送速度にどれだけ差があるのかというと、おおよその平均値で比較すると以下の通り。

HDDはもっと転送速度が遅くなります。
3D性能

ゲーミング用途のパソコンではないため、本来計測する必要はないのですが、3DMarkのFire Strikeで3D性能もチェックしてみました。
結果は771と、想定通りの数値です。
人気の高いオンラインゲームで遊ぶなら、GTX1050などのGPU(画像処理専門の頭脳)を搭載したゲーミングノートを買いましょう。

いずれの数値も当ブログで計測したものなので、参考程度にお考え下さい。
オンラインゲーム
「ゲーミングノートじゃなくても、それなりにゲームを動かせるのでは?」
と思って有名なパソコンゲームのベンチマークソフトを走らせてみました。
いずれも1920×1080(フルHD)の環境で確認したところ、ドラクエXのような軽いゲームであれば何とか動かせそうです。
ゲーミングノートでも高画質で遊ぶのが大変なファイナルファンタジー15は、画質を落としてもプレイできないという結果に。
ファイナルファンタジー14は画質を落とせば、ギリギリどうにかなるかも・・・といった結果でした。
FF15

ファイナルファンタジー15は動かせないという結果に。どうしても遊びたいなら、プレイステーション4を買ったほうが手っ取り早いでしょう。
FF14 紅蓮のリベレーター

高品質 | 1380(設定変更が必要) |
---|---|
標準品質 | 3741(快適) |
ドラゴンクエストX

最高品質 | 3741(普通) |
---|---|
標準品質 | 4337(普通) |
低品質 | 4545(普通) |
https://pc.sukecom.net/gaming-pc/
Adobe関連のソフトウェア
ゲームを動かすのは難しいとしても、重要なのは仕事で使うソフトウェアが動くかどうか。
写真のRAW現像、画像加工、動画編集がサクサク動くかどうかを試してみました。
LightroomでRAW現像

Lightroomで有効画素数3,635万のニコンD810で撮影したRAWデータ100枚を読み込んでみました。
等倍表示やトリミングなどで多少のもたつきは感じるものの、動かせないということはありません。
時間のかかるjpegへの書き出しも、以下の条件で試してみました。
- 画像形式:JPEG
- 画質:100
- カラースペース:sRGB
- 画像のサイズ:未調整(撮影データそのまま)
- 解像度:350
- メタデータ:すべてのメタデータ(人物情報や撮影場所の情報は削除)
RAWデータ100枚の書き出しにかかった時間は4分47秒でした。

正直に書いてしまうと、もっと時間がかかるだろうと思っていたので、いい意味で裏切られました。
100枚を5分以内で書き出せるなら、私個人としては十分合格点です。
書き出し中の排気音はほぼゼロ
通常、ノートパソコンでRAWデータを書き出すと、パソコン内部のファンがフル回転します。
パソコンによっては結構うるさいのですが、HP Spectre x360は書き出し中ほぼ無音。
耳をすますと多少の音は聞こえてくるものの、図書館で作業しても怒られることはなさそうなくらい静かです。
Photoshopで画像加工
続いてPhotoshopでCamera Rawを動かしてみたところ、画面サイズが小さすぎてうまく表示できない状態に・・・

RAWデータを編集するときは外部のモニターに出力するか、Lightroomを使ったほうがよさそうです。
また、画像や写真のちょっとした加工は難なくこなしてくれました。

ただ、何十枚もレイヤーを重ねるような作業をするときは、画面が小さくて使いづらいです。
ブログなどに載せるちょっとした画像加工、レタッチ程度なら問題なさそうです。
Premiere Proで動画編集
動画編集も試してみようとPremiere Proをインストールしたところ、いきなり「画面のサイズが合ってない」と注意書きが表示されました。

使えないということはないのですが、実際に作業をしてみると画面が小さくて確かに使いづらいです。

Premiere Proを動かすだけの実力は持っているので、動画を編集するときは大きめの外部モニターを使いましょう。
https://pc.sukecom.net/creator-pc/
見た目だけじゃない実力派

HP Spectre x360のプロフェッショナルモデルをいろいろさわってみましたが、見た目のおしゃれさだけではなく、仕事でも十分使える実力派だと感じました。
出張や移動の多いビジネスマンにとって持ち運びが楽なパソコンは絶対正義ですし、タブレットモードにすれば打ち合わせや会議でも使いやすいです。
一般的な薄型ノートパソコンよりちょっと値段は高めに感じるものの、価格に見合ったデザインと実力が備わっているので、買ってから後悔することはないでしょう。
「Macbook ProとiPadが欲しいけど、仕事の都合上Windowsじゃないとダメなんだよな・・・」
と考えている人にはジャストミートしそう。
おしゃれで高性能な薄型ノートパソコンを探している方は、ぜひHP Spectre x360をチェックしてみてください。
